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嘘を聞き分ける耳を持ち、それ故に孤独になってしまった大学生・深町尚哉。幼い頃に迷い込んだ不思議な祭りについて書いたレポートをきっかけで、怪事件を収集する民俗学の准教授・高槻に気に入られ、助手をする事に。幽霊物件や呪いの藁人形を嬉々として調査をする高槻もまた、過去に奇怪な体験をしていたーー。「真実を、知りたいとは思わない?」凸凹コンビが怪異や都市伝説の謎を『解釈』する軽快な民俗学ミステリ、開講!
おもしろさ
読みやすさ
ミステリー度
ミステリー初心者にはオススメ!
怪異を混ぜた新しいミステリー分野だと思いました(もし他にあったらすみません)
でも本格ミステリーをお求めの方には物足りないかもしれません
ミステリーが苦手だけど挑戦してみたい!って方にはオススメです
私もミステリーは苦手なのですが、難なく読めました!
角川文庫出身ですけど、ライトノベルの様で読みやすいです!
出会いとしては、ジャケット買いでした
「なんか格好いい人がジャケットになってる!」
ページをめくっていくと
「うおっ!なんだこれ?!どうして文字が斜めになってるの????」
「なんか新しくておもしろそう!厚みもないし、すぐに読めそう!買おう!!!」
ってな感じでこの本を手に取りました 笑
実際に内容は期待以上!
怪異を通してその謎を解き明かす大学准教授とその生徒、です
私は大学を出たわけでないので大学の講義というものは分からないのですが、まるで読んでいる私も高槻先生の講義を受けているかのような錯覚に陥ってしまいました。
もちろん、講義の中に出で来る話も興味深く勉強になります。
この1巻の中では
高槻先生の講義
- ツチノコ
- 雷
- 『ザ・リング』(日本版とハリウッド版の比較)
- 三遊亭圓朝と幽霊画
- 平和と怪談
- 『視聴草』の『奇病』:奉公先に行くと体から針が出てくる病
- 『神隠し』:人をさらう天狗の話
月刊コミックジーンさん、漫画家相尾灯自さんでコミカライズもあります!
小説が苦手な人は漫画から!
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以下はメイン人物の特徴とあらすじです。少しネタバレもございますので、ご注意ください
メイン人物
深町尚哉
- 青和大学文学部。メガネ男子
- 幼い頃に不思議な体験をしてから特殊な耳を持つようになった
会話の中の嘘が分かってしまう。嘘の部分の声は歪んで聞こえる。 - 耳にはいつも音楽プレイヤーを着けている
- 『民俗学』の授業で准教授の高槻彰良先生と出会う
- 高槻先生の助手になる。主に常識担当。
高槻彰良
- 青和大学の文学部史学科民俗学考古学専攻の准教授。34歳(1巻)
- 『民俗学Ⅱ』担当
- 『隣のハナシ』というサイトを開設している
今まで聞き集めてきた都市伝説の例話とその分類を載せている - かつて尚哉が飼っていたラブラドールレトリバーに似ている。犬っぽい。
- 記憶力が異常に良い
- 目が青っぽく見える時がある
- 鳥が怖い
- 背中に翼を切られたような大きな傷痕がある
- 12歳の時に1ヶ月行方不明になる神隠しにあった事がある
- 神隠し後家族とは折り合いが悪くなり、海外の親戚のところへ預けられる
- 大学に入る前に日本に帰国
- 民俗学の研究をしているのは、自分の身に起こった事を解き明かしたいと思っている
あらすじネタバレ
深町尚哉 10歳(小4)
長野のおばあちゃん家の近所の夏祭りで不思議体験をしました
でもその年の祭りの日は、布団から起き上がれないのほどの夏風邪を引いて、従兄たちと夏祭りに行けませんでした
泣き疲れて一時寝てましたが太鼓の音で目が覚めます
真夜中で太鼓の音がするのはおかしいと思いましたが、熱で重かった体が楽になったので、従兄達のお土産の戦隊モノのお面をつけて太鼓の音がするお祭りへ行きます
お祭り会場にはたくさんの人がいました。大人も子供も居て、でも毎年見ているお祭りとは雰囲気が違い、赤い提灯でなく青い提灯が吊るされていました。他にも、太鼓の音しか聞こえなかったり話し声が全くしない。大人も子供もお面を付けていました
その風景にぼんやりしていると、後ろから肩を掴まれました
肩を掴んだ人はひょっとこのお面をしていて、その声は自分の祖父の声でした
祖父は驚いていて、尚哉も驚いていて付けているお面を外そうとしますが、外すことを止められ、「すぐに帰れ」「気づかれる前に」と言われましたが気づかれ、盆踊りをしていた人たちが、尚哉と祖父を見ていました
祖父は「代償を払わなければ帰れない」と言って尚哉を一軒の屋台の前に連れて飴を選ばせます
りんご飴を食べれば、歩けなくなる
アンズ飴を食べれば、言葉を失う
べっこう飴を食べれば、、、、、、
尚哉は祖父の説明に、りんご飴をアンズ飴に比べれば怖くないと思い、べっこう飴を選びました。
その時のべっこう飴の甘さを忘れられないくらい、後悔とも言えない気持ちが大学生になってもまとわりついているのです
深町尚哉 と 高槻彰良
青和大学 文学部1年 深町尚哉
彼は特殊な耳を持っています。「人の会話から嘘が分かる耳」
その耳は人の会話の中から嘘の部分だけ歪んで聞こえます
講義の始まるまでの数分間、生徒たちの話し声で気分が悪くなります。会話の中は歪んだ声でいっぱいです
そんな声をかき消してくれたのは、今回の講師の高槻彰良先生でした。歪んだ声の中で、唯一の澄んだような声で、教壇に立っていました
高槻はイケメンで、尚哉の周りにいる女子も高槻のイケメンぶりに騒いでいました。高槻先生は、テレビにも出演してトレンドに上がっていた「イケメン准教授」みたいです
高槻先生が講義をするのは『民俗学』で、主に研究しているのは怪談や不思議な話、怖い話、奇妙な話、妖怪や幽霊の中でも現代で語られている怪談や都市伝説について。トイレの花子さんなどの話の背景や元ネタについて研究しています
尚哉はそんなのが学問として成り立つのかと疑問でしたが、尚哉を含め他の学生たちも高槻先生の話に釘付けでした
その日は高槻先生の講義に対する紹介と注意事項、少しの講義で終わりになりました
尚哉はサークル勧誘の嵐をくぐり抜けて図書館で、高槻先生が解説しているサイト『隣のハナシ』を見てみた。投稿された一つを読んでみたけど、投稿された話はオチもなく終わっていましたが、高槻先生がこの話をどう分類するか興味を惹かれ高槻先生の講義を自分の時間割表に書き込みました
高槻先生は講義だけでなく人物しても面白く、絵はひどいほど下手で、でも講義の参加者全員を記憶するほどの超絶な記憶力の持ち主でした
尚哉が高槻先生に呼ばれたのは、6月の始めでした
高槻先生の尚哉のレポートへの推察
6月初め
尚哉は先日の講義で提出したレポートのオマケで書いた件で呼ばれます。そのオマケには人から聞いた話や、自分の不思議体験を書き込むものでした。尚哉はその不思議体験の部分に、子供の時に体験したあの祭りのことを書きました
高槻先生はそのレポートの中の細かなことを聞き、高槻先生なりに推理・解釈していきます
死者のお祭りではないか
尚哉がお祭りに参加できたのは、お面を付けていて死者と勘違いされ参加できたのではないかと思われる
あの世とこの世、人の住む世界と対比する形でつけていたのではいか
どこかへ行って、そこにあるものを食べるのは、そこの共同体に属すること。尚哉が「帰ってきている」事実に何かを食べたのではないかと推測
高槻先生の最後の質問にヒヤリとしましたが誤魔化して、どうして不思議な話に興味があるのかと聞くと、高槻先生は「本物の怪異があるなら知りたいし、会ってみたいし、遭ってみたい」と答えました
とても物好きで変人な先生です
第一章 いないはずの隣人
呼び出された日に高槻先生の助手のバイトにスカウトされます
最初は断りますが高槻先生の交渉術で、「隣のハナシ」からきた依頼に常識担当かつ地図読みの案内人としてバイトをはじめました
相談者 桂木奈々子
2ヶ月前にアパートに引っ越してきて、異変に気づいたのは1ヶ月前
隣の壁から「コツコツ」ノック音が聞こえてそれが何日も続く。聞こえてくる壁側はお隣さんの部屋で抗議に行くと空き家になっていた
でもその後のノック音は続くし、爪で壁を引っ掻く音も加わる
自分の部屋に自分のものでない長い髪があったり、別の日にはベランダの窓ガラスにベッタリと手形がついていたり(2階の部屋です)
「実はこの部屋が事故物件かも」と不動産屋にも相談したが「事故物件ではない」と言っていたが、対応がおかしかった気がした
音の原因を確かめてほしい!!
この部屋で生活して恐怖している桂木さんに対しての高槻先生の反応は、、、、、
ああ本当に!心底羨ましい!そんな素晴らしい部屋に住んでいるなんて、今すぐ僕と変わってほしいくらいです!事故物件、幽霊騒動、なんて知的好奇心を刺激してくれる部屋でしょうね!桂木さん、どうかぜひ僕にその部屋を調査させてください!そうですね、まずは部屋の中を見せてもらってもいいですか?ああ、わくわくするなあ、出るかなあ幽霊!楽しみだなあ!
です、、、、、笑
話している内容と、高槻の表情、依頼者の桂木さんの手を握ってブンブン振って、声も大きくて周りの人も引いています、、、、
尚哉は先生と桂木さんを引き離し一番年下なのに大人2人を叱ります。桂木さんには「ただしイケメンに限る」発言を叱りました。今後の苦労が目み見えます 笑い
桂木さんのアパートに移動して、部屋の中の壁や窓を見せてもらいます。ベランダの向こうには大きな桜の木があり、音の聞こえる部屋との境には薄い壁で仕切られていました
桂木さんがお世話になった不動産屋『ミツハシ・ハウジング』へ行くと男性職員の山口さんが対応してくれました。山口さんは桂木さんが部屋を借りる時も対応してくれた人で、高槻先生を連れてきたことにビックリしていました
高槻先生の単刀直入の質問に、山口さんは原因の部屋で話をしてくれました。
実は桂木さんの隣の部屋は心理的瑕疵物件で、桂木さんには住むわけでないので告知はしなかったとのこと。
心理的瑕疵になった原因を聞くと、尚哉の耳には山口さんの歪んだ声が聞こえてきました。山口さんが説明するのはほぼ全て嘘で、どうして嘘を言う必要があるのかと苛立ちました
その苛立ちに高槻先生は気づいていましたが、なんでもないように笑い、引っ掻いていたと思われる壁を見て実際に傷があることを確認しました
桂木さんが爪で引っ掻いた音は壁に残った傷跡で立証され、今度は周辺の聞き込み調査へ
桂木さんの住んでいるアパートでの死者について聞いて回りますが、ある近所のお婆さんが「この世の中で死んでない土地なんてあるわけないんだよ」と言って、お婆さん以外にアパートでの死者について話してくれる人はいませんでした
高槻先生と尚哉は、桂木さんの部屋で一晩張り込みをして様子を見ることに。その間桂木さんは友人の家へ泊まってもらうことに
桂木さんを駅まで送って行く途中で帰宅途中の林田さんに会います。山口さんは近所に住んでいて、以前に夜中に部屋にいるのが怖くて飛び出した桂木さんを、たまたまコンビニに来ていた山口さんが匿った話を聞きます
桂木さんの部屋で、高槻先生に今回の依頼にたいしてどう思うかを聞きます。高槻先生は「雷」「映画・リング」を使って『現象』と『解釈』の話をします
今回の桂木さんに起っている現象
現象1
夜中に誰もいないはずの部屋から物音がする現象2
2階のベランダに外から手形がついた現象3
自分のものではない髪の毛が部屋の中に落ちていた
桂木さんの解釈 霊現象
高槻先生の解釈 現象を可能にするのは、霊だけじゃないよね
高槻先生の話ぶりに、先生は真相をわかっているのでは?と思った矢先、ベランダから叩きつけるような音がします。ベランダには桂木さんから聞いた手形がベットリついていました
尚哉はベランダの隣の部屋との境の薄い壁が簡単に外れたことに気がつき、犯人を追いかけます
犯人は玄関の方へ逃げ込み、高槻先生の背負投げで伸びていました
犯人は不動産屋の山口さんでした
不動産屋を訪ねてきた桂木さんに想いを寄せて、隣が空室の今の部屋の入居を勧め幽霊騒動を起こしてそこから助け出し、あわよくば、、、、、と思ったのでした
高槻先生は、壁の傷跡を指摘した時の山口さんの動揺ぶりで目星をつけたようでした。加えて、尚哉の山口さんに対しての疑いの目が気になったのも要因でした
高槻先生は、尚哉が「初めから」疑っていたことを気づいていました。でも「嘘がわかる」なんて気持ち悪く思われるから言えない。「人間観察が趣味で、観察しているうちに人の嘘がわかるようになった」と苦しい言い訳をします。高槻先生は納得?したように身を引きます
桂木さんはアパートを出ることにして今回の騒動は解決しました。これでバイトは終わり、高槻先生とも元の位置関係に、、、と思っていたのに先生は新たな依頼の聞き込み日の日程計画を立ててきました
バイトはここれ切りと思って言いましたが、高槻先生の歪みない声で尚哉を必要としました。
かつて実家で飼っていたゴールデンレトリバーに似た高槻先生の笑みに負け、これからも先生のバイトを引き受けることにしたのです
第二章 針を吐く娘
夏休みになって1ヶ月
高槻先生から「幽霊を見に行こう!」とお誘いを受けます。また幽霊物件、廃墟の探検などといった依頼かと思いきや、「幽霊画を見に行く」お誘いでした
毎年8月に谷中圓朝まつりでは、谷中にある全生庵という寺で三遊亭圓朝さんが収集した幽霊がのコレクションを一般公開されているのを誘ってくれたのでした
メンバーは、高槻先生、佐々倉健司(通称、健ちゃん(先生だけ))、生方瑠璃子先輩の4人で見に行くことに
名前だけ聞いていた佐々倉さんは、あだ名の割に強面な男性で先生の幼なじみです。お仕事は刑事さんで先生の常識担当の1人です
高槻先生の鳥恐怖症のことも知っていて、「何かあったら(先生が鳥でぶっ倒れたら)呼べ」と尚哉に連絡先を渡す優しい人でした
4人で幽霊画を見に行った帰り、大学の学生とバッタリ会い、相談を持ちかけられました
相談者 原沢綾音 牧村琴子
2人は中学からの友達で、大学では文学部1年
怪異に遭っているのは綾音さん
始まりは、日比谷公園の中の一つの木に、藁人形があり、針が沢山刺さっていた写真を撮り、それを高槻先生の講義のオマケレポートに書いた後
藁人形には、頭部と胴体に釘が1本。待ち針が20本。普通の針が10本刺さってた
その藁人形を見て以来、身の回りに針が落ちていることが増えて、藁人形の呪いかも?! 現象が起きているのは綾音さんだけで、琴子さんには起こってない
どうして『針』なのか
2人は高校まで手芸部で、人より『針』は身近なものだった
起こってる現象を聞き終えて、カフェのケーキを食べた時綾音さんの食べたケーキに『針』が入っていて誤って口の中へ入れてしまいました
綾音さんは口の中を刺してしまい、2人で高槻先生に付き添われて病院へ
この時、2人の様子を見る高槻先生の瞳は青かったのです
その夜
尚哉は高槻先生から2人の身辺調査の依頼を大学に友人が居ないのでと断りますが、「じゃあ、バーベキュー大会を開こう!」と2週間後に聞き込み且つバーベキュー大会が決行されました
聞き込みすることは、二人の仲とキャンパスの途中から加わった男子学生の素性(先生の超記憶で発覚)
集まったのは『民俗学Ⅱ』を受講している学生対象に、大学のSNSで呼びかけて30人以上が集まりました。もちろん、綾音さんと琴子さんも参加してます。
尚哉は2人が来るのは半信半疑でしたが、先生は「きっと来る」とわかっていたようです
二手に分かれて聞き込みをすることに、尚哉も嫌々ながらも空いてるテーブルを探してると語学クラスの集まってる難波のテーブルで一緒にバーベキューをすることに
ジャンケンで負けて肉を焼くのに、聞き込みを忘れるほど夢中になってしまうが、メンバーの中に2人とサークルが一緒の青木さんがいました
- 2人は傍から見てもベッタリくっついてるので仲が良く、イイ子の印象。
- 裁縫道具も持ち歩いていて、待ち針が床に落ちた所を目撃したことも
- 他に仲良いのは同じサークルの2年の高須先輩。綾音さんと5月くらいから付き合ってる。でも先輩は2人の仲の良さに気を使って、デートに琴子さんを誘ってるらしい
2人のことを聞いてると難波が「青春?!」とからかってくるがかわします
高槻先生と尚哉が、お互い収集した情報を照らし合わせてると、バーベキュ会場の方で琴子さんが怪我をしていました。患部からは『針』が出てきました。高槻先生はその場を「蜂に刺されたようだ」と嘘でおさめました
とうとう琴子さんまで怪我をする事態になってしまったので、高槻先生は『お祓い』の提案をします
翌日
高槻先生の研究室に、綾音さんと琴子さん、尚哉が呼ばれます。
高槻先生は講義の形で『お祓い』を始めました。題材は『視聴草』の本の中の『奇病』というお話
『視聴草』の本の中の『奇病』
少女が奉公先に行くと身体の至る所から針が回収された。治療をしても治らず、奉公先から帰されると治った。また別の奉公先に行っても体調が悪くなり、帰される
少女はいじめられていたのかもしれない、折檻の一つだったかもしれない。
少女の自作自演だったのかもしれない
II
2人の起っている現象も自作自演
藁人形の呪いではない
琴子さん | 綾音さん |
藁人形の写真を撮る(綾音さん) | |
高槻先生のレポートに書く | |
「藁人形に刺した針が戻ってきたのかもよ」と指摘 (藁人形の呪いになってしまった) |
身の回りに『針』が付きまとう |
あとになって琴子さんが『針』を巻いていることに気づく(『針』が出るのは琴子さんと一緒にいる時だけ、でも直接指摘ができなかった) | |
高槻先生に相談 「現象」起っているのは琴子さんのいたずらと気づいていましたが 「怪異」として相談をして琴子さんを庇った |
|
高槻先生の前で 「針」で怪我をする怪我をすることで 琴子さんに「やめてほしい」とアピール |
|
後になって 綾音さんの自作自演と気づく |
|
バーベキューを利用して 自分に「針」を刺して 藁人形の呪いが起っていると 思わせるために |
初めは、彼氏のできた綾音さんへの嫉妬心からがはじまりだった。でも自作自演の連鎖が続いてしまい、収拾がつかなくなってしまった
2人はお互いにしたことを謝りますが、尚哉が聞く言葉にはお互いの歪んだ声が混じり、耐えきれずに倒れてしまいました
高槻先生は尚哉が声を聞くだけで嘘が分かることを気づいていました。2人が帰った後に10歳の祭りの夜のことを打ち明けます
レポートに書いたことは本当のこと。そこで祖父に声をかけられたこと。その祖父はその前の年に亡くなっていること。飴を食べたこと。その飴を食べた後の意味をちゃんと理解していなかったこと。
祖父は「べっこう飴を食べると『孤独』になる」と言っていた。その言葉通り、尚哉の元から、友達も両親も離れていきました
尚哉も「嘘」の言葉なんて聞きたくなくて、実家を出で、人と関わる上でのルールを自分に課したのでした
高槻先生は、尚哉の話を聞き「これからも傍にいてほしい」とお願いします。その上で、一緒に尚哉の視に起ったことを解き明かそう!と提案してくれました
先生が少し出ている間に、生方先輩が顔を出しに来ました。生方先輩は綾音さんと琴子さんの現象が解決するだろうと高槻先生に聞いていたので、覗きにきたようです
尚哉が丸く収まったと伝えると「先生ならそうする」と思っていたようです。生方先輩は普段から高槻先生をジェントルマンで天使のように優しいと感じていて、そう思う理由もありました
いつかの研究会の帰りにゲリラ豪雨に遭い、高槻先生とずぶ濡れになった時にシャツから透ける先生の背中に傷跡を見て以来、「先生は天使なのかも」と思うようになったそうです
第三章 神隠しの家
夏休み明け 9月
夏休み明けの高槻先生の講義も人がまばらで、でもその中には綾音さんと琴子さんもいた。2人は『針』の事件からも仲良くしているらしい
尚哉は高槻先生の講義を聞きながら、生方先輩が教えてくれた先生の大きな傷痕のことと、自分の耳のことを打ち明けた時に言っていたことはどういう意味なのかと、思い出してました
講義が終わると高槻先生からバイトの呼び出し。今回のバイトは、講義内容と同じ『友達が神隠しに遭ったかも』とサイトからの依頼でした
相談者 水谷はな
調布市に住んでる高校2年生
友達の松野紗雪さんが夏休みの終わりに神隠しに、遭ったかもしれない。紗雪さんはもう見つかっている
夏休みらしいことをしたく、紗雪さんの提案で『肝試ししようよ』となった。紗雪さんの家の近所の山の中に、廃屋に忍び込もうって
その廃屋はお化け屋敷と評判があるらしい
はなさんは、沙雪さんを止めましたが紗雪さんは1人で行ってしまいます
行く前にLINEで「これから行ってくる」のメッセージを最後に紗雪さんは行方不明になってしまいました
翌日の昼間に、紗雪さんを探しに廃屋に行ったら、男の人に声をかけられた。男は廃屋の住人らしい
男の人に紗雪さんのことを聞いても「知らない」と言って「この辺りは神隠しが起こるらしいから気をつけて」と言われました
翌日の夜、紗雪さんは自宅から遠く離れた八王子の路上に倒れているところを発見されます
紗雪さんは意識が朦朧としていて病院へ運ばれました。いなくなっていた間のことは覚えてなかった。肝試しに行ったことさえ覚えてなかった
もう紗雪さんは見つかってるが、紗雪さんに何が起きたのかを突き止めて欲しい!
はなさんは、紗雪さんを強く止めなかったことを後悔して、今回の相談をしました
高槻先生は「君が責任を感じることはないと」慰め、神隠しを調べに廃屋へ行きます
廃屋は、絵に書いたような建物で二階の窓も割れていました。表札には「羽田」とあります
インターホンを押しても誰も出ないので、近所の人に聞き込みに近くの公園にいた小学生に聞きました
ガキ大将っぽい男の子は、テンポ良く高槻先生に話します
- お化けが出るらしいこと
- 友達が見たことあるらしい
- 人魂みたいなのを窓越しにみた子がいる
廃屋の話と別に怖い話(学校の怪談)まで聞きだ、そのテンポの良さに尚哉とはなさんは唖然。
ガキ大将に話を聞き終わると今度は主婦に話を聞きに。はなさんが、実はホストなのではないかと疑問に思うほどにスムーズに聞き込みを終えました
聞き込みの結果
- やっぱりあそこには誰も住んでないらしい。数年前までお婆さんが住んでいたけど亡くなってからは無人。それはガキ大将の智樹くんも知ってるぐらいのこと
- はなさんの会った男の人は、もしかしたら勝手に住んでいるかもしれない人
- 神隠しの噂を知ってる人はいなかったこと。
聞き込みだけでは、紗雪さんの身に起きたことが分からないので夜に家に入ってみることになりした
入るのは高槻先生だけと説得されそうになりますが、尚哉は廃屋の2階に鳥の巣があった事を理由に逆説得し一緒に行きます
夜
廃屋の中には、最近買ったと思われるコンビニの袋がありました。やっぱり人の出入りがあったようです
り
リビングに入ると変な匂いを感じました。青臭く甘ったるく、尚哉は嗅いだことのない匂いでした。高槻先生はソファのそばに葉を拾い上げ、匂いの原因を突き止めます
その葉っぱは大麻で、おそらくはなさんが会った男の人が栽培していたものみたいです
- この廃屋は空き家になって目をつけた男が、大麻を育ててた
- 「お化けが出る」の噂を流したのもその男が、廃屋に近づけさせないため
- 紗雪さんは訪れた時に男と鉢合わせしてしまい、大麻を吸わされてしまった
だから、意識が朦朧としていた - 紗雪さんの処理に困り、遠くの八王子に捨てた
大麻は移動された後のようでした、見なかったことにもできないので佐々倉さんにメールをするとすぐに返信が、、、内容は怒っているようでした 笑
佐々倉さんが来るまで外で待とうとした時、車の音がしました
廃屋を使っていた男が来たようです。2人は脱いでいた靴を回収し一旦2階に上がり様子を見ます。入ってきたのは男が2人。会話の中で「廃屋に火をつける」と言ってます
火を付けられる前に逃げようとしますが、尚哉が誤って物音を立ててしまい男2人に見つかってしまいます
高槻先生が男2人を相手にしている間に玄関を開けようとしますが、建てつけや錆で開きません
高槻先生を押さえつけていた男に尚哉が頭突きをして2階に逃げましたが、そこはあの鳥の巣があった部屋でした。
部屋の引き戸を本棚で押さえつけていましたが、羽を見てしまった高槻先生の様子が何かに怯えているように変わってしまいます。瞳の色も変わっていました
高槻先生の意識はそのまま無くなり、尚哉は1人で男たちの侵入を食い止めていましたが、いつの間にかそれも無くなりました。外の気配を意識しながら高槻先生の様子を見ると、完全に意識を失ってして起きる気配を感じませんでした。
その時尚哉は焦げ臭い匂いを感じます。男たちが大麻の証拠と一緒に尚哉たちも始末しようと考えたみたいです
扉は外から出られないようにされたのか開かなく、高槻先生は意識を失ったままで絶望的な状態でした。なんとか高槻先生を起こそうとしますが全く起きる様子はありません。担ぐにも2人の身長差で火事場のバカ力も出ません
助けを呼ぼうと模索してる時、佐々倉さんが助けに来てくれて、廃屋から逃げられました
佐々倉さんが乗ってきた覆面パトカーで高槻先生の家に向かう途中で、尚哉がことの経緯を説明し怒られます(怒ったのは意識を無くしている高槻先生に)
代々木にある先生の家に到着し、尚哉は佐々倉さんに高槻先生がどうして今のようになってしまったことを聞きます
高槻先生は12歳の時に神隠しに遭った
世田谷の自宅2階から、ある晩に姿を消えてしまった。
当時、1階には両親が居て、玄関を使われた様子もなく靴も全部あった、2階の窓は開いていた。その晩から一週間見つからず公開捜査が開始し、マスコミが『神隠し』と書きたてたのです
身代金の要求もなく、1ヶ月後に京都の鞍馬に近い路上で捨てられたように見つかります
その時の高槻先生の足は靴を履いていなく、でも足の裏も綺麗だった。犯人は車で運んだのだろうと推測されたが、不審車は見つからなかった
さらに、見つかった時高槻先生の背中は血だらけで、皮膚を剥ぎ取られたような傷を付けられていました
高槻先生は、その1ヶ月のことを何も思えていなかった。その後から鳥を異常に怖がるようになったり、記憶力が異常に向上したり、瞳の色がたまに変わったように見えるようになります
警察は何一つ手がかりを掴めななく、高槻先生の両親も、1ヶ月の間に息子に何があったのか、戻ってきた息子の変化の理由がわからないままで不安に思っていました
(佐々倉さん曰く)親戚の1人におかしな人がいて、その人が高槻先生の母親に「彰良はきっと鞍馬の天狗にさらわれた」「天狗になりかかったところを、翼を切られて人間界に戻ってきた」と言い、高槻先生の母親は精神的にも参っていてそれを信じてしまいました
その後も色々あり、海外の親戚に預けられ、大学に入る前に日本に戻ってきたのです。実家はお金の面の援助はしていたようです
佐々倉さんは、高槻先生の行方不明の間のことはどうでもよく、帰ってくれたことに嬉しく思っていました。
「神隠し」から帰ってきて、なんでもなれるくらいの超記憶力を持っているのに、高槻が仕事に選んだのは民俗学の研究をすること。それを研究することで、自身に起きたことを解明しようとしているの佐々倉にもわかりました。でも実際の調査で犯罪に巻き込まれるのは今回だけじゃなく、今までもあり、それをフォローするのは構わなかった。
佐々倉さんはいつか高槻先生が『本物』を引き当ててしまうのを恐れているのです
佐々倉さんの話す高槻先生の身に起こったことは、言葉になんの歪みなく聞こえ、尚哉は初めて「歪んで欲しい」と願ったのでした
翌日には、男2人は捕まったと報道されていました。
尚哉は数日後に、高槻先生の元に事件後に初めて向かいました。
高槻先生は民俗学を研究するのは、自身に起きた「神隠し」事件を怖いままにしたくなく追っていて、それは神隠しかもしれなし、誘拐事件かもしれない。民俗学で研究してる中で同じような事例を解き明かした時、自身に起きたことも分かるかもと思い、研究しサイトからの依頼も受けてきたのでした
知らないより、知った方がいい。と思っていて、尚哉の身に起こったことも一緒に解き明かそうと甘い誘いをし、尚哉はそれを受けます
「自分用のカップを持ってくる」と言って返事をしました
終わりに
初めは、高槻先生がカッコ良くて、ジャケット買いでした(笑)
いざ読んでみるととっても面白く、最初に述べたように講義の部分も興味深いものばかりでした
私たちは個々の怪談のルーツを知らなくて
この本書に出てくる、『雷』や『神隠し』も文字通り捉えてしまいがちですが、よくよく当時の時代背景を考えると「そうだよな」とか「なるほどね」と思うものばかりでした
第一章のお婆さんの一言にも
この世の中に死んでない土地なんてあるわけないんだよ
この一言が刺さりました。小さいことではないけど、どこの土地も遡れば建物はなくて草原だったかもしてなくて、戦争をした土地だったのかもしれない。長屋があって大火事があったかもしれない。そう思うと「事故物件で騒いでられないな」と考えさせられました
この本を読んでから「未知」のものに対しての恐怖が薄らいでように感じます
先生の言葉で印象に残ったのは
高槻「怪異を怪異をたらしめ、お化けを生み出すのは、大抵人の心なんだよ。(中略)怖いものを怖いままで置きたくないから、人はそこに物語を作って与える。」
です!!
「お化けを生み出すのは、大抵は人の心」
その通りではないかと思いました。怖いから、抽象的なお化けを人は使うんでしょうね。
未知だから怖い。でも未知だから気になってしまう。
この解釈を知ってから、ニュースなどの「分からない」「不安」のコメントに対する受け止め方が変わりました!
どんどん読んでしまい、あっという間に読み終えてしまいました
本書は短編(3〜4編)で、1巻は300頁いかないくらいの厚みなので、読書家の方も、初めて澤村御影先生の文庫を手に取る方も手に取りやすいかと思います。
今(2021年)は新型コロナウィルスに対してや、コロナワクチンの副反応の未知に、たくさんのニュースが流れてます
人体の構造や、人体の生理学のなかの抗体について分からないと、聞いたことのない言葉に人々が「未知=恐怖」になってしまい、過剰恐怖反応をしているような気がしました
「知らないよりは、知った方がいい」
それは自分たちの身体でも言えるな、と日々感じてます
高槻先生の講義
- ツチノコ
- 雷
- 『ザ・リング』(日本版とハリウッド版の比較)
- 三遊亭圓朝と幽霊画
- 平和と怪談
- 『視聴草』の『奇病』:奉公先に行くと体から針が出てくる病
- 『神隠し』:人をさらう天狗の話