小説

『マチネの終わりに』(著・平野啓一郎)感想考察

 

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2019年11月に映画化された原作です

主演は福山雅治さん、石川ゆり子さん。
大人のしっとりした愛を表現するのにとてもピッタリなお二人でした!

天才クラシックギタリスト・蒔野聡史と、国際ジャーナリスト・小峰洋子。四十代という″人生の暗い森”を前に出会った二人の切なすぎる恋の行方を軸に、芸術と生活、父と娘、グローバリズム、生と死などのテーマが重層的に描かれる。いつまでも作品の世界に浸っていたいと思わずにはいられないロングセラー恋愛小説を文庫化!

文庫より

 

『マチネの終わりに』の感想

『マチネ』 とは

午前中の意味で、演劇・音楽界などの、昼間興行のこと。

きっと興行を終えたあと、何がかあるのではないか、と思いますね。

 

 

おもしろさ 
切なさ   
感動    

「おもしろい」よりは「大人の恋愛」のお話なので、「切なさ」と終わった時に「ジーン」っとした感動がありました

特殊な仕事をしている2人の運命の出会いのお話

 

ただの恋や愛と呼べないような、運命の人、運命の出会い。魂の呼応。

お互いをお互いが必要としているが、あと一歩のところで交わらない苦しみ、葛藤。

あの日は回避できた出来事では無かったのか、との自問自答。

お互い大人すぎた故に、考え過ぎて、後に真実を知っての後悔。と、これから。

だけど「過去は変えていける、変えられる。」

考えさせられる、深い話でした。

 

 

今、仕事を頑張っている時期にこの小説を読めてよかったと思いました

主人公・蒔野まきのの「未来は常に過去も変えている」の言葉も伏線の一つであり、それにとっても考えさせられました。

多くの人には、変えたい過去もあるでしょう。それはもしかしたら変えられる過去かもしれない。自分の過去はどうだっただろうと、、、、。

 

音楽的な知識や、哲学が学べる1冊でもありました。
音楽的知識は難しかったけど、『生存者の罪悪感』については学べたのではないかなと。

 

原作を読んだ後に映画も観ました

実際に原作でもピックアップされている『幸福の硬貨』。ギターの優しい音に心が落ち着いき、洋子さんがこの音に救われていたのが分かったような気がします。
原作での、マネージャー・三谷早苗の印象も少し変わったのでぜひ観て欲しいです(^^)

 

実際に福山雅治さんのギターで『幸福の硬貨』の音がCDであるので聴きながら読むのも味が出でいいかもしれません!

原作では音楽的知識もあるので
原作を読んで、映画を観る。のが私のオススメの順番です。
是非、映画主演の福山雅治さんと石川ゆり子さんで当てはめて、読んでみてください。

 

 

蒔野「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去も変えている。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それだけ繊細で感じやすいもの

 

「仏神は貴し、仏神をたのまず」
宮本武蔵が決戦前に神社に立ち寄り勝利を祈ろうとしたが、自戒を込めて書き残した言葉。″神頼みをしようとする己の弱さこそが敵ではないのか″と。

 

三谷「皆、自分の人生の主役になりたいと考えている。それで苦しんでいる。自分もそうだったけど、今はもう違う。蒔野さんの担当になった時、私はこの人が主役をする″名脇役″になりたい
(中略)
蒔野さんが主演を務める人生に、ずっと、すごく重要な脇役としてキャスティングされ続けるなら、自分の人生はきっと充実したものになってる。」

 

この3つは、とっても素敵な一説だと思いました。

「未来は常に過去も変えている」の文は本書の中の重大な一文です
本書の過去が変わった瞬間は涙が出ました。

 

三谷さんの「名脇役」。とっても素晴らしい考え方だな、と思いました
誰しもが「主人公になりたい」。でもそれは一握りの存在。なかなか自分の思う「主人公」にはなれないと思います

悩み多き人生の分岐点の時「主人公になるべく道はどちらか」と選ぶときはたくさんあるかと思います。

そんな時、三谷さんのような「この人が主役をする″名脇役″になりたい」と思えた時、すごく気持ちが楽になると思うんです。

人生の、物事への考え方も変わったように感じます。

 

 

 

おわりに

福山雅治さんと石川ゆり子さん主演で映画化されました

蒔野さんはギターリストだったので、ギターを素敵に弾く福山さんにピッタリの役ですね
福山雅治さんと石川ゆり子さんだと思って本書を読んでみると、とても読みやすかったのでオススメです!

 

 

人生はままならない

本書の三谷さんの行動は、人間味があって、世の中の誰しもが起こしてしまうかもしれない行動だったのではないかと思います

「この行動がなかったなら2人は上手くいっていたのに」という感想がいっぱいあります。

映画での三谷さんはとっても震えていましたから、きっと「蒔野さんのため」と言い聞かせながら「自身の恋」と「蒔野の恋」を天秤にかけてしまったんでしょうね

彼女は「自身の恋」を勝ち取り、本書ではそれを貫き通しました

私は、映画での三谷さんの行動の方が潔くて好きです

 

彼女のその行動の違いを読んで観るのも面白いかと思います(^^)

 

 

2人のその後は、本書でも、映画でも、描かれていません

私はその後、2人は三谷さんを許して、穏やかに過ごしていったのでないかと思います

お互いに子供はいますが、そこは大人な2人。責任は放棄しません
きっと理解しあって、時には相談しあい、子育てをやり遂げたでしょう

 

そんな素敵な2人です

2人が結ばれるまでの話を、小説からでも、映画からでも良いので、
是非読んでみてください