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『アクタージュ act-age 11巻』(著・マツキ/宇佐崎)感想とあらすじネタバレ

 

 

表紙は羅刹女の夜凪。透き通るような肌が眩しい。
帯まで舞台『羅刹女』の鑑賞券になって凝っていて美しいです。

王賀美だけでなく他の出演者のも出できて、夜凪の怒りと向き合っていきます

サイド甲の舞台「羅刹女」は、王賀美の助演としての機転により、夜凪が演じる怒りに荒れ狂う羅刹女を、観客に共感対象に仕立てることに成功し、第一幕を終える。
しかし、夜凪の怒りは収まることなく、激しい憎悪に飲まれそうになりながらもギリギリのところで踏み止まる。
限界がいつ訪れてもおかしくかない中、舞台は第二幕の開演へーーー。

「bookより」

 

『アクタージュ act-age11』感想

終幕まで駆け抜けました

 

「羅刹女」は花子さんの怒りの炎を鎮めて欲しい話だったんですね
花子さんから夜凪へのメッセージ

「私を許せるのか。許してくれるか。許してほしい」

その思いは紙面越しからも伝わってきました

 

他の出演者の演技も面白かったです
この「羅刹女」は「西遊記」の話の一つだと、ワタシは認識しているのですが、、、、笑
私の中の「西遊記」は主演・香取慎吾さんで、その中の三蔵法師は深津絵里さんなのです。

三蔵法師は、やっぱり優しく、強く、諭してくれる、美しい人

ってイメージがありましたが『アクタージュ』の中の三蔵法師は、男性で
でも優しさのイメージは崩れなかったのですが

夜凪の羅刹女の怒りを鎮めるときの演技がとても印象的でした。

「人は鏡」とはよく言ったものですね

 

仏頂面の方は、「近寄りがたいな」と勝手な思い込みが先行して、こちらまで仏頂面になってしまいますし

逆に、
いつも笑顔の人は親しみやすさがあり、声をかけやすいですよね

怒りには、怒り

 

子供に限らず大人になっても、周りとの円滑なコミュニケーションを取る上で、表情も大切なものだなと思いました。

特に今(2020年8月時点)は、コロナによりマスクが表情を隠してしまい
仕事に支障をきたしている方もいると思います

「目は心の窓」
目で語ることも覚えなくてはいけませんね

 

本書の話に戻りますが
個々の分岐点のお話もありました

夜凪も分岐点だったのかなと思います
その上で夜凪が怒りの炎に呑み込まれなくて良かったです。

夜凪にはお母さんが亡くなった時みたいに自分を律するために虚勢を張る必要がない事に、1人で頑張らなくていい事に、今は自分を支えてくれる仲間がいる事を気づいてくれて良かったです

最後はメゾット演技で締める舞台になっていました

 

あらすじネタバレ

「アクタージュ」10巻
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scene89 海の中

羅刹女の怒りと悲しみは、かつての王賀美も日本という国に感じていたものだった。

主権と助演がサイドに履け、観客の中にいたかつての共演者と学校の友人たちは、王賀美と夜凪の演技に感動と感心をしていました。

夜凪の芝居の異常さに気づいたかつての共演者は「生まれながらの主演俳優・王賀美陸」でなければ今日の舞台は成立しなかったと、、、、

制作側の天知と星アリサは、夜凪の成長スピードに感心をしていた

 

夜凪は絶妙なバランスで精神を保ていました

「羅刹女」を演じるために呼び起こしたかつての感情(幼い姿の夜凪)を、飼い慣らそうとしていました

そんな夜凪を花子はなおも煽る

夜凪は、幼い自分と花子に「引っ込んでいて」!!と言い聞かせる

scene90 鏡

第二幕が始まります。
木彫りで作った火焔山が燃えています。羅刹女の怒りも炎のように燃えています

今度は、羅刹女と三蔵法師(白石宗)との対峙です

 

三蔵法師を演じる白石宗は呟くように、羅刹女に火焔山の炎の消す方法を問います
淡々と呟いているような演技なのに、羅刹女は一瞬たじろぎます。

白石宗は、その見た目から過去は善人役ばかりやってきていましたが、今は任侠映画で優しい微笑みで強面の男たちと対峙している演技に恐ろしさを感じさせる演技をする、誰が聞いてもその言葉に正しさを感じさせる役者さんです。

正論で怒りの治らない羅刹女と対峙し続けます

scene91 夜凪のために

羅刹女が三蔵法師の言葉に耳を傾けようとした時、猪八戒(烏山武光)と沙悟浄(朝野市子)が間に入ってしまい、三蔵法師が羅刹女を騙したようななってしまった。

今度は羅刹女と猪八戒(烏山武光)の対峙です。

 

かつて映画『デスアイランド』で脇役クラスメイトで共演した二人
武光は映画の時と今とで、夜凪との力量の差に対峙して初めて感じてしまいます

猪八戒と羅刹女が対峙していたはずなのに、羅刹女の夜凪は猪八戒を見ていない事に武光は気づいてしまう。

 

それに袖にはけていた王賀美と花子も気づいていた

強者はモブを相手にしない
モブは自らモブに成り下がってしまう
自らモブを演じ続けた時、名無しのまま消えていってしまう
それが役者

王賀美は目の前でそうなっていった役者をたくさん見てきた

武光はそれが今日、その日になるかもしれなかった

scene92 我武者羅

羅刹女は、騙した(ようになってしまった)三蔵法師しか見ていない

武光は夜凪の演技から、同士だったはずの夜凪にいつしか憧れを持ってしまった事に気づいてしまう
それは夜凪が成長して遠ざかってしまったわけでなく、自分から遠ざかってしっまった事にも気づいてしまう

いったん、羅刹女の一人芝居に。

 

袖にはけた、三蔵法師一行

すぐに武光と市子が舞台に上がらなくてはならない

でも武光は、対峙した夜凪との実力の差に
「今のまま舞台に上がってしまったら、もう二度と役者を名乗れない」悟ってしまう

その問いに白石さんが答えます
「そういう日はふいに訪れます」
「あなたはそれが今日だった」
「私たちに求めらせるのは、自分の立ち方」だと

その間に王賀美が割って入る
「凡人のことは分からない」
「そして俺は孤独だった」と
でも王賀美と共演を願い続けてくれた白石には感謝していると、、、、

 

今の羅刹女は、孤独だ

武光は決心をして、舞台上の羅刹女と対峙する

scene93 大きな流れ

市子の過去

7歳の頃から芸能界にいました
仕事の増減と周りの観察から10歳の時、芸能界の”大きな流れ”に気づいてしまいます

王賀美陸の”大きな流れ”の時、市子は目を逸らしてしまった
そして再び今回の”大きな流れ”の夜凪景と対面してしまう

武光が夜凪景の”大きな流れ”に対面していた事には気づいていました
市子は今回も”上手く乗り過ごそう”としていましたが、再び夜凪と対面する武光を見て感化されます

本気で羅刹女の夜凪と対峙します

 

控室で舞台を見ていた阿良也は、夜凪の脅威と共演する役者たちに感心してしまう
「夜凪は共演者たちを本気にさせてしまう」と

 

本気になった孫悟空、猪八戒、沙悟浄が舞台に上がる

でも、展開を知ってるサイド乙(主演・千代子)側はこのあとの終演が想像出来ないでいました。

炎を消し、許しの演技ができるのかと

scene94 炎

学生の頃の花子

彼女は美術部で絵を描いていました
幼い頃のコロポックルを描いていたが満足な絵を描くことは出来ないでいました

芸術大行っても絵を描き続けていましたが、どの絵も完成しては燃やしていたそうです

そこに小説家を名乗る夜凪父が訪れます
花子に「燃やしてしまうなら、燃えている絵を描けばいい」「僕に燃えている絵を描いて欲しい」と伝え

花子は絵を燃やすことは無くなったそうです

でもある日、夜凪父は花子が彼のために描いた絵とともに消えてしまいました。

 

花子は炎の絵を描きながら、現実へと怒っていました

 

天知に芝居で絵を描いてみないかと誘われ了承したが、主演が夜凪父の娘だと知ったのはその後でした
でも夜凪と関わっていくうちに夜凪に対して興味が湧いてしまう。

羅刹女の怒りは花子の怒り

怒りの先を夜凪に演じて欲しいと期待をしている

scene95 アイデンティティ

夜凪、王賀美、市子、武光の演技はますます苛烈を増していきます

羅刹女の台詞は花子の本心。
夜凪の心の叫び

幼い夜凪は怒り続けている

 

花子自身その怒りを持っていながら、夜凪に許しを得ようとしている事に怒りが増す

scene96 限界

夜凪は、花子を許しを得ようとしている事に怒りが増し、芝居を一瞬放棄しようとしてしまいます

それは観客には気づけれないほどの一瞬の出来事だった
でも、共演者や関係者、サイド乙(主演・千代子)側の人たちは気づいていた

「私を「許してみろ」」と三蔵法師(白石宗)越しの花子に向かって問い続けます

 

三蔵法師(白石宗)は、羅刹女(夜凪)に向かって怒気の表情で「許します」と言います

そんな三蔵法師に羅刹女は、自身の醜さに気づき、たじろいでしまいます

 

scene97 届け

孫悟空(王賀美)は羅刹女(夜凪)に、火焔山の炎を鎮め、怒りを沈めてくと語りかけるが、夜凪には届かない、、、、

夜凪の視界は花子を捉えようとしますが、それを猪八戒(武光)がはばみ、羅刹女は孫悟空達を見ます

夜凪は正気に戻り、みんなが待っている事に気がつきます

舞台を壊さないために。花子を許すことを待っています。

 

夜凪は前に出て、全てを許すために手に持っている芭蕉扇で火焔山の炎を消そうとする演技をしようとします

でもそれは、ただ人形のように台本通りに演技しようとしているだけ。
夜凪の芝居ではありませんでした

それに王賀美たちも、千代子たちも気づいています

scene98 風

人形のような演技をしようとしている夜凪に、残念がる

 

芭蕉扇を振ろうとする夜凪を、孫悟空(王賀美)が止めます

これは台本にはない指示でした
王賀美たちは舞台より夜凪の芝居を守りました

 

夜凪は、みんなの行動に泣き崩れてしまいす
怒りに飲まれてしまった弱い自分に腹が立って
みんなに負けさせた自分に腹が立って
止めてくれたみんなに「ありがとう」と思う自分に腹が立って

夜凪は「今」幸せだと思っている
怒りも悲しみも過去になったから

涙を拭い、羅刹女は芭蕉扇を降って風を起こします

おわりに

最後は駆け抜けた

 

11巻は観客の感情の変化はなく、共演者の過去や今を描いていました
この舞台で共演者たちは成長できたようです

きっと彼らは、また夜凪と共演してくれるんだろうな
その時は穏やかな演技だといいですね