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長野での記憶を失ってから元気がない高槻のもとに、絶縁状態だった従弟から連絡が。婚約者の肩に人面瘡が現れたという。高槻と尚哉が赴くと、婚約者は高槻に向かい「天狗様!」と叫び……?ほか、高槻のサイトに実家の旅館にあるという「紫鏡」の調査依頼が寄せられた。依頼人の幼い頃、母親が鏡に吸い込まれ消えたという。古参の従業員も、鏡については言葉を濁しーー。異界に魅入られた凸凹コンビの民俗学ミステリ!
bookより
おもしろさ
冷っと
ミステリー
「鏡」にまつわるお話でした
学校の鏡、双子の鏡、姿鏡
昔や地域の風習によって「双子」は不吉の象徴と言われたところもあったらしく、、、、無知による偏見だなと思った時もありました。
最後のお話の「第三章 紫の鏡」は「ホンモノ」の怪異が起きてゾッとしました。ゾッとしてページを捲る手が止まらないほどでした。
6巻のお話は、5巻での尚哉の祖父母の家の長野へ行った後のお話。幼い尚哉の身に起きた祭りの調査でしたが、とんでもない結末で終えました。
その後の気持ちの整理として、とても重要な回だと個人的に思いました
表紙からも、不安な表情の「高槻」と少し清々しい表情の「尚哉」な風に感じ取れます。それは何故か、、、、、
『准教授・高槻彰良の推察6』あらすじネタバレ
第一章 お化け屋敷の幽霊
長野から帰って1週間
尚哉と高槻先生は顔を合わせていませんでした
1週間前の帰り道
高槻先生の長野での記憶が抜け落ちていました。高槻の記憶の中では「今は14日」で、家の玄関を出たところまでの記憶しかなく、現実は「16日」の帰りの車に乗っている状態でした
尚哉は、高槻の記憶が抜け落ちてしまったのは《もう1人の高槻(=青い目を持つ高槻)》のせいではないかと思っています
長野から帰っての尚哉の日常は変わっていません
尚哉が持ってしまった耳の力、その原因の祭りについて、ずっと知りたかったと思っていました
祭りは、異界化してしまった祭りで、
伝承ではなく本当に現世に戻ってくる死者たちの祭りだったこと。それを管理しているのは山神がいること。その山神の山は黄泉に通じていること。青い提灯は、現世の人間が用意していて死者を慰めるために用意していたこと。
その異界の祭りには死んだ祖父母がいて、二度目に祭りに来た尚哉に対して「知って満足したか」と聞かれて時は「よかった」と思っていましたが、帰ってきた時間が経つにつれわからなくなってしまいます
長野から帰ってから高槻先生とは顔を合わせていませんでしたが、会いに行こうと決意した時佐々倉からの電話で、高槻が長野旅行から帰ってから体調を崩したことを聞き、様子を見に行ってとお願いされます
実は佐々倉は、高槻から尚哉の耳のことを知っていました。一緒に行動している時、時折体調の悪そうにする尚哉を心配して高槻に原因を知っているか聞いたようです
高槻は、代々木のマンションに住んでいました
突然来た尚哉を快く招き入れてくれ、長野の話をします
祭りの話に差し掛かった時、高槻の瞳が青みがかりました
話をしている中で、尚哉は祭りの時の高槻の瞳の色が茶色だったことを思い出します
瞳が茶色だったことは、《もう1人の高槻》が祭りを見ていなかったことに尚哉は気づきます。だから今、尚哉の長野での話を《もう1人の高槻》も聞いていることに気づきました
高槻先生は《もう1人》の存在を知っていました。《もう1人》が表に出ている時、高槻の記憶は無く、後になって周りの指摘により気づくことが多かったのです。これは神隠しの事件前にはなかった出来事でした。
今回の長野での記憶を消したのは《もう1人》で、記憶を消したことで高槻の主導権を奪っていたのです。それがはっきりと判明し、高槻は自分の研究は無意味なのではないかと落ち込んでいました
《もう1人》は高槻の記憶を消すことができ、神隠しでの間のことも知っているようでした
神隠しでの間のことを思い出すのは、約束違反で。「あの人」と呼ばれる人に高槻少年はお願いをして、家に戻ってきた。
少年だった高槻にも「人」と認識するような何かで、神隠しではなく誘拐事件だったのではないか、、、、ということがわかりましたが、結局記憶は消され肝心なことはわからないまま
落ち込んでいる高槻に、尚哉は夕飯を作りいつか言われた
何かを食べておいしいって思えるなら、それはとても幸せなことだ
と高槻に返します
高槻は夕飯後久しぶりにサイト「隣のハナシ」を開き、尚哉のすすめでい依頼を受けることにしました
数日後 新宿
女子2人が尚哉たちを待っていました
黒髪の大木梨乃と栗色髪の槙野愛理と名乗ります。2人のはしゃぎ様から「噂のイケメン教授に会ってみたい」と言うのがメインのように見えます
依頼 大木梨乃 槙野愛理
遊園地のお化け屋敷でお化けを設置していないところから悲鳴が上がり、それが本物かも?!と思い調べて欲しい
お化け屋敷を出た後、アンケートを取っていてそのアンケートの書き込みでもお化けの出ない「出口の前の廊下にある鏡が怖かった」とのコメントがいくつも見つかり、そのコメントは日付も筆跡も違います。しかもアンケートだけでなくSNSでも同じ内容が見つかりました
でもスタッフの中ではその鏡を怖がっている人はいません。そもそも、お化け屋敷の舞台は学校ではあるけど、話の内容には「鏡」なんて出てこないのに、出口の前の廊下は設置されていることも不自然で、鏡が設置されていることも不自然
遊園地のお化け屋敷は、外部からのお化け屋敷プロデューサーに頼んでいるものだったのでその人に会って話を聞くことにしました
9月初めの土曜日
高槻、佐々倉、瑠璃子先輩の4人で遊園地へ
尚哉は久しぶりに来た遊園地に目が回ってしまいます
まずは依頼のお化け屋敷へ、高槻のお化け屋敷のルーツを聞きながら移動します。お化け屋敷はもともと寺社の出開帳どの所謂「ハレ」の場に見世物屋で開かれてたらしいです
- 「ハレ」:儀式や祝祭などの特別なことを行う日。非日常
- 「ケ」:それ以外の日常
怪異は、人々にとって動物園のように柵の向こうに覗き見ることのできる非日常であるべきで、当事者になってしまうと娯楽ではなくなってしまう、と尚哉は高槻の話を聞いて今まで高槻先生のもとにきた依頼を思い出します
移動の最中に、大学生くらいの4人組のお化け屋敷についての会話から嘘が聞こえました。話の内容は、依頼人の梨乃と愛理のものと同じでした
高槻はその4人組に話しかけ、その話を聞いた場所と来たのは「初めてか」を聞き出しました。そのうち3人は「初めて」で1人は「初めて」と答えましたがそれは嘘でした
高槻たちは、お化け屋敷にはいる組み合わせを、高槻と瑠璃子先輩、佐々倉と尚哉と決めました
佐々倉は、お化けや幽霊は苦手ですが、お化け屋敷は仕事柄平気なようでした。尚哉は一瞬、長野での出来事を思い出してしまいますが佐々倉に助けられ正気を取り戻せました
先に入った高槻と瑠璃子先輩の声も聞こえ、2人は2人でお化けの造形に関心しているようで、お化け屋敷スタッフに申し訳なくなる思いでした、、、、笑
最後の例の廊下にたどり着いた時、なんの変哲も無い鏡でした。でも佐々倉には何か見えているようなことを言い、その場を去ります
16時に、お化け屋敷の外部のプロデューサーに会う約束をしていたので、それまで4人で遊びました。尚哉も瑠璃子先輩に指摘されるぐらい笑い、楽しめました
16時 お化け屋敷スタッフルーム
プロデューサーの後藤は30代後半〜40代の男性でした。
高槻先生は、お化け屋敷の最後の廊下の鏡が実験だったのでは無いかと指摘します。後藤も素直に3つの実験をしていたことを話します
高槻はなぜそこまでして人を怖がらせるのか、後藤のルーツを聞き、後藤の話の中でも先程の先生の話の中の『ハレ』と『ケ』の話が出てきました
非日常の水準が日常になりつつあり、遊園地の非日常である場所でお化け屋敷の非日常を提供する。後藤さんは遊園地でバイトをするほど遊園地を愛していました。それが今の仕事にも繋がっているようです
高槻先生と後藤さんは、マイナーなホラー映画の話が上がっても話が途切れないほど相当ウマが合い、「次はお酒でも」と約束して別れました
高槻は今回の依頼が怪異とは関係ないと分かっていましたが、愉快な知り合いができて、結果楽しめました
尚哉は無理矢理調査をさせて申し訳なく思いましたが先生が元気になって良かったと思うのでした。ちょうど鏡張りの壁沿いを歩いていて、今回の依頼の下調べの、鏡の映る幽霊の噂について改めて聞くと、噂では女の人が映っていると噂されていました
佐々倉とお化け屋敷に入った時のことを報告すると、高槻は無言で携帯を取り出し佐々倉に電話をかけます。佐々倉が見たのは「男の子」。そんな目撃情報は下調べの段階ではありませんでした。
つまりーーー「本物」かも、、、、?
佐々倉は昔も幽霊を見たことがあるようで、高槻の興奮は止まりませんでした
この興奮で高槻は改めて、自分は怪異の話が好きだったことに気づきます。だから自分の過去の真相を突き止めるのを諦めないけど、《もう1人》がそれを許さないこともわかります
だから、尚哉に記憶を失うことがあったら、尚哉が覚えていて、それを教えて欲しいとお願いします
尚哉は、いつも助けてくれる先生に何かできないかをずっと考えてましたが、そのお願いが高槻の望みなら「もちろん」と了承します
高槻は改めて尚哉に「長野に行けて良かったね」と伝えます、村の中村さんの話で「山神の支配は、村の中だけ」と分かって「良かった」と
尚哉は祭りであった祖父の言葉が胸の中でつっかえてしましたが、今ではすんなり答えられると、解放されて気持ちでした
第二章 肌に宿る顔
9月の終わり
夏休み明けの最初の講義は『ジェットババア』について
講義を進めていると教室の後方に男性が1人入ってきました
その人は高槻の身内、従弟の高槻優斗でした。高槻とは20年以上前のイギリスに行く前に会ったきりで、高槻に相談があり訪ねて来たようです
依頼 高槻優斗
優斗の婚約者・鷹村未華子さんに「人面瘡ができてしまって、それを見てほしい」
数日前
優斗さんは一人暮らしをしている未華子さんに1ヶ月ぶりに会いに行きましたが、いざ会うと一瞬別人かと思いましたが、顔色が悪く、思い詰めた様子でした
未華子さんは泣き崩れ、見せてくれた右肩には凸凹と赤黒く盛り上がっていました
未華子さんは病院には行きたがらず、以前に「人面瘡」についての本を読んで「自分の右肩にできたものは人面瘡に違いない」と思い込んでいる様子
病院には行きたがらないが、高槻先生に相談をしたいと持ちかけたのは未華子さん自身でした。「『天狗様』ならなんとかしてくれる」と
尚哉は身内が関わることで高槻が苦しい思いをするのではと思い、依頼を受けることに反対しますが、結局は高槻に言いくるめられ翌日一緒に優斗さんと未華子さんに会うことに
翌日の夜
優斗さんが車で迎えに来てくれます。一緒にいた尚哉に不審げな視線を向けますが、優斗さんも高槻に言いくるめられます
移動中は優斗さんとの思い出話を高槻が嬉々としてお話ししてました
行先は、婚約者の未華子さんのマンション。未華子さんに会うと先生を見て感極まった様子を見せます
「人面瘡」が出来た右肩を見せてもらうと、確かに凸凹と赤黒く盛り上がっていました
不安そうな未華子さんは「どうすれば」という問いに高槻は「病院を行ってください」と笑みを浮かべて勧めました
民俗学者の高槻は「人面瘡」では無いとつげ、専門家の医師に診せるべきと促しますが、未華子さんは病院に行きたくないようです
未華子さんの言葉尻と尚哉の耳で、未華子さんの嘘を見抜き、未華子さんの行動の目的を考えあぐねていましたが、目的は「先生」でした。未華子さんはずっと『天狗様』の先生に会いたくて「人面瘡」を理由に呼び出したのでした
高槻は尚哉を連れて帰ろうとしたところ、インコの鳥籠を持った未華子さんに足止めされてしまい、羽ばたくインコに気を失いかけてしまいます
優斗さんの車に優斗さんと尚哉で高槻を運び、高槻は優斗さんと未華子さんの高槻家の付き合いと高槻の母の様子を聞きます。高槻のお母さんは一時は外にも出られない状態だったが、今は外に出て親族の集まりにも出ているそうです
高槻は落ち着きを取り戻したとき、優斗さんは未華子さんの態度に弁解をします。普段はあんな感じではなく、インコも飼っていなかった。優斗さんは未華子さんが変わってしまった原因は肩の出来物ができたせいと思っていますが、高槻はそれを「昔からあったもの」と否定します
あの出来物は最近できたもので無く、もっと前からあったと説明して、優斗さんは今回の出来事で初めて未華子さんの肩を見たことがわかりました。
その会話に高槻がからかい、慌てて言い訳する優斗さんの様子に、尚哉は優斗さんの印象が変わりました
からかいながら未華子さんとの馴れ初めを聞いていると、今日の印象と話の中の印象に違いを感じました。デートの写真を見せてと高槻の催促に、優斗さんは仕方なしに某ランドのツーショットを見せます
写真の様子を話していると、後ろに高槻父の秘書・黒木がいました
黒木は薄っぺらい笑みで、優斗さんに高槻と関わるなと暗に言います。優斗さんとは別れ、黒木の要件を聞きます
黒木の要件は、高槻母がトークショーをする日はその近辺に近づかないようにと釘に刺しに来たのでした
黒木の冷めた言動に、尚哉は苛立ち、2人の会話に割って入りますが高槻に止められ黒木は帰っていきます
家を壊したという自嘲する高槻に、尚哉は否定します。その様子に高槻は嬉しくなり、同時に後悔します。長野への旅行以降、尚哉は変わったと思いました、そのきっかけの出来事を忘れてしまったことに、とても悔しく思ったのです
次の日 土曜日
尚哉は新宿にいましたが、色々言い訳を述べて初台へ
黒木の言う通り、高槻母・清花のトークショーが開催されていました
会場に入ろうか入らないか悩んでいると、フリーライターの飯沼に会います。飯沼とは山梨で分かれたきりでした
飯沼はまた高槻のことを調べていて、記者の勘でトークショーに来たことをタダ券で見せしめ、尚哉を誘いますが断る尚哉を無理矢理トークショーに連行します
トークショーには、写真家とみられる男性と美しい女性が壇上にいました。女性の方が高槻の母・清花です。高槻母は年齢を感じさせない美しさでした
バレエ時代の話や結婚後の家の話などをしてトークショーは終わりました。写真家の男性と高槻母が壇上から移動しようとした時、飯沼は感想の述べながら壇上に駆け寄ります
会場スタッフにかまわず、飯沼は息子さんとの関係について質問し、高槻母はその質問に歪みない声で「息子は行方しれず」と言ったことに尚哉はショックを受けます
高槻母はまだ夢物語の中にいると思わせる発言でした
月曜日 午前
未華子さんがいなくなったと連絡が入ります
優斗さんは土曜の夜から未華子さんに電話をしますが出ず、折り返しもなく、、、、今日月曜の英会話学校に無断欠席をしてることを確認し行方知れずになってることが分かりました
尚哉が夕方に高槻の研究室に来た時には出かける直前でした。出ようとする高槻を尚哉は「関わらない方がいい」と止めますが、先生はもう事件になっているかもと急ぎますが、行方不明の未華子さんが研究室に来ました
未華子さんは先生に抱きつき、抱きつく未華子さんに高槻は「未華子さんではないですね」と問いかけます
彼女は未華子さんの双子の妹・百合子さんでした
百合子さんには、生まれた時から肩に出来物があり、それを幼な頃にからかわれ、同じ顔の未華子との違いに、自分と未華子を「鏡」に例えるようになりました
「本物は未華子、鏡像は私(百合子)」と、、、、、
次第に百合子さんは外にも出なくなり内向的になっていきました。逆に未華子さんは社交的にすくすくと育ち、両親も未華子さんを可愛がるように、、、、。でも未華子だけは百合子とずっと一緒にいました
鷹村家は高槻母が主催していた「天狗様のお茶会」に未華子さんだけ参連れて加していました
そのお茶会で、2人はある悪戯をしました。
未華子と百合子の入れ替わり。
入れ替わったことに気づかれないようにお茶会に百合子も参加したのでした
その入れ替わっていた時、百合子は高槻と会い、高槻に「きみはだれ?」と未華子でない事を気づいたのでした
百合子はそれが嬉しかったのです。高槻に指摘されるまで、母親でさえも百合子のことを気づいてくれなかったのに、初めて会った高槻は気づいてくれた。嬉しくて嬉しくて、百合子はまた高槻に自分を見分けて欲しくて、今回の行動を起こしたのでした
でも高槻は、失踪後の異常な記憶力で百合子と未華子を観察し、2人の違いを見分けただけでした
百合子と高槻はそのお茶会を最後に会うことはなく、百合子の性格はますます内向的になってしまい、大人になり、社会に出ました。ですが、いきなり両親が百合子に留学させます
その理由は、未華子のお見合いがあったからでした。両親は未華子のお見合いに合わせて百合子を留学させて百合子を隠したのでした
見合いをしたことは未華子から聞き、隠された自分にショックと見合いの相手が「高槻」と聞きて、未華子に成り代わって高槻に会ったのでした
百合子の話を聞いて、尚哉はいつかの高槻の『ジェットババア』の講義を思い出します
「どこまでも追いかけてくる女」
それに百合子が重なり、恐怖を感じました
百合子さんはまた高槻に見分けてほしくて、さらにはどこかの物語の王子のように今の環境から救い出してくれるのではないか、と思っていたのでした
高槻は、百合子さんとは「『天狗様』と呼ぶ人とは一緒にいられない」と言い諭します。百合子は高槻に拒絶されたことにショックを受けて、果物ナイフを向けてまで高槻を手に入れようとします
高槻はナイフをいなし「殺してでも手に入れたい相手とどうしても殺せない相手。大事なのは一体どちらなのだと思いますか?」と未華子さんの居場所を聞き出します
数日後
優斗さんはお礼をしに研究室まで来ました
未華子さんは無事に救出され、百合子さんは精神科の治療を受けることに、、、、
優斗さんは2人を見分けられなかったことにショックを受けましたが、百合子さんを恨む気にはならなかったようです
優斗さんも、幼い頃から親戚に高槻を比べられる言葉をいくつもかけられていて、百合子さんの気持ちも分からなくなかったのです
高槻は優斗さんの告白を初めて聞き謝ります、今回の依頼をきっかけに2人のわだかまりは溶けたようでした。優斗さんの結婚式の写真を送る約束をして、帰っていきました
第三章 紫の鏡
10月
高槻先生の講義では『紫鏡』についての取り上げでした。というのも、サイトから『紫鏡』の件で相談があり、今回の講義にピックアップしたらしい
その週の土曜に、相談者と会うことになりました
相談者 松井志穂
浅草の老舗旅館の娘で、もうすぐで20歳になる
家に「紫鏡」があり、子供の頃にその鏡のせいで母がいなくなってしまったことがある。
もうすぐ20歳になるので、この鏡が本物かどうかを調べてほしい!!
《土曜の聞き取り》
家の決まりがある:奥の納戸には、家長以外は入ってはならない
家の1階の奥に納戸があり、古いものが置いてある。「紫鏡」も置いてあり、入っては行けない理由はその鏡があるから。
今の家長は、志穂さんのお父さん。
志穂さんは、部屋の外から鏡をみたことはある
「紫鏡」:紫の布が掛かった、和風の古い姿見。松井家の家宝。
志穂さんが、鏡を「紫鏡」と思うのは、お母さんがそう言ったから。
お母さんは、7歳の時に母が消えてしまった。小学校から帰って、家の中でお母さんを探してると、「入ってはダメ」と言われてる納戸に入っていくのを見てます。
「入ってはダメ」の言いつけを守って、お母さんが出てくるまで納戸の見える内庭で遊びながら待ってました
お母さんはいつになっても出てこなくて、お母さんを探していたお父さんにお母さんの居場所を聞かれ、納戸を指を刺すと、お父さんは慌てて納戸の方に。そこにはお母さんの姿はなく、鏡が見えました。いつもの布が掛かってない鏡でした
お父さんにお母さんのことを聞くと「このことは忘れなさい」と言うだけでした
もうすぐ20歳の誕生日を迎えるから、自分も家の「紫鏡」で消えてしまうのではないかを不安になり、高槻先生に相談を求めたのでした
高槻先生は志穂さんの話を聞いて、「本物かも!!」と興奮し、志穂さんに握手またはハグをしようとしますが、しようとする前に同席の尚哉が止めます
高槻先生は理性を取り戻し、志穂さんの話の中で分かっていることを順に解いて行きます
- 志穂さんの家の「紫鏡」は、高槻先生の知る数多の「紫鏡」とは外れてること
- 「20歳になるまでに……」のルールからは、語り部がお母さんで消えた時の年齢と合わないこと
でもこれだけでは志穂さんのお母さんが消えた謎が解明されてないので、志穂さんの家に行って実際にその鏡を見ることになりました
志穂さんから、家に行く名目として「浅草の研究」のためとなりました。最近、志穂さんとお父さんは、進路のことで喧嘩していて。家の「紫鏡」の調査で大学の准教授を呼んだと知れたら、もっと折り合いが悪くなるかも知れなく、、、、、
高槻先生は尚哉に目で許可を取り、志穂さんの家に向かいました
志穂さんにはもう新しいお母さんが居て女将として働いていました。お父さんの所在を聞くと、外出していたのでそのうちに納戸の鏡を見ることになりました
納戸を開いた瞬間、尚哉は奇妙な感覚に襲われました。空気が重く、嫌な感じ。でも高槻先生や志穂さんは何も感じてないようでした
納戸の中の鏡は部屋の真ん中にあり、その前には神棚の様に小さな陶器製の瓶子や小皿が置いてありました
鏡は直接調べることができないので、旅館で1番古参の奈津子さんに話を聞くことにしました
高槻先生が、奈津子さんに旅館での決まりや志穂さんのお母さんの失踪した時に納戸にいた理由を知らないかと質問すると、尚哉の耳には「わからない」と歪んだ声が聞こえました
奈津子さんは志穂さんを気にしているようでした。そこで丁度外国人観光客が迷子になり訪ねて来て、英語の得意な志穂さんがその場所まで案内をすることになり、その場を離れました
志穂さんが出てったのを確認し、奈津子さんに志穂さんが「家の紫鏡のせいでお母さんがいなくなってしまったのではないか」と気にしてることを伝え、志穂さんには伝えない約束で聞くことができました
奈津子さん曰く
いなくなったのは志穂さんのお母さんだけでなく、若い男の従業員もいなくなっていたらしい。おそらく駆け落ちをしたのではないかと思われてる
奈津子さんは前々から2人を怪しく思っていて、2人で納戸に納戸にこもっているのを見たこともあり、他の従業員も志穂さんのお母さんが着物を治しながら出てきたのを見たことがある
家長が言うには、お金も少し無くなっていたらしい、、、、
志穂さんのお母さんは「入ってはいけない」納戸で男と会っていた
でも、その場を娘に見せる訳にはいかないので「紫鏡」の怪談を利用して、志穂さんに恐怖をもたせ納戸に近づかないようにした
確かにこの真相は志穂さんには伝えにくい内容でした。どうしたものかと思っていると、後ろに人の気配があり、そこには志穂さんのお父さん(以下松井さん=父)が居ました
高槻先生は正直に調査の理由を言い、志穂さんが鏡とお母さんの因果関係で悩んでいることを伝えます
ですが、松井さんの言葉の中に歪む声を尚哉は聞きました
奥さんの失踪の本当の原因を知っていて、それが駆け落ちではなく、鏡のせい、と言うことを、、、、
高槻先生は、尚哉の合図に興奮していき、松井さんに「鏡を見せて」と迫ります。その瞳は夜空色に変わっていて、松井さんは怯え、不気味な圧に押されて鏡を見せる承諾をしてしまいます
尚哉は納戸には行きたくないと思っていました。さっき覗いた時の嫌な感じをもう一度味わいたくないと思ってまますが、高槻先生は納戸へ入ってしまいます
やっぱり納戸の中は嫌な感じや空気が重く、ここから離れたいと恐怖が襲ってきます。でもその恐怖の原因わからなく本能的に思っている感じでした。そしてこの空気、感覚を尚哉は知っている気がしました
高槻先生や松井さんは平然としていて、話を進めてます
尚哉は今すぐにでも出よう、と高槻先生に伝えたいが声が出ません
高槻先生は、志穂さんのお母さんが消えた時の再現をしようと鏡の覆いを取ろうとすると、それを松井さんが止めます
その理由は、「影を取られてしまうと言われているから」「影、命をーー魂を吸い取られてしまう」と言われている鏡でした
高槻先生はその言葉を聞いて、覆いを取ってしまいます
鏡の中には3人が写ってました
曇りのない鏡は急に曇り始め、何も見えなくなってしまいます
高槻先生はよく見ようと、鏡に近づこうとしますが尚哉がそれを止めます。尚哉は本能でヤバい鏡だと感じてました
そして急に鏡の曇りが晴れ、、、、でも写るのはどこも知らない風景でした。3人を写していません
鏡の中は、中華風の建物に大きな門が写っていました。
門が開き、門の奥にはたくさんの人ずらりと並んで立っていました。
中の人は、中国風の服装の人もいれば、洋服の人、和服の人、色々な服装の人がいました。
ふと、松井さんが「里香」と呟く声が聞こえました。門の中に、30代ぐらいに着物の女性とその隣に作務衣の男もいました。いなくなった志穂さんの母親と従業員の男でした
尚哉は、門の中の人と目が合ってしまい10歳の祭りの夜を思い出します。そして、あの本能的な恐怖の理由が、部屋の空気があの祭りの場と似ていることに気づきました
この場を離れようと高槻先生に呼びかけますが、高槻先生は鏡を見ながら動きません。
鏡の中の人たちが、尚哉たちに向かって鏡を超えて手を伸ばしてきます
その瞬間、高槻先生の瞳が青く変わり、鏡を押し倒し、割れまてしまいます
鏡を超えてきた手は無くなってました。高槻は倒れた鏡を無表情に見つめてましたが、不意に意識が戻ったのか、鏡が割れていることにビックリしていました
松井さんに「弁償します」とおろおろとしながら伝えますが、松井さんは「しなくていい」「早く割るべきだった」と言い鏡が家に来た経緯を話し始めました
この鏡は、松井さんの祖父さん(志穂さんはひいお爺さん)の代に、借金をかたに誰からか取り上げたものでした。お祖父さんは鏡を「人喰いの鏡」と呼んでました
松井さんもこの鏡が髪を梳かしていたお婆さん(祖母)を喰うのを見たことがありました。お祖父さんにそれを伝えると「忘れろ」と言われたそうです
人を喰うと分かっていて起き続けたのは、鏡を手に入れてから商売が上手くいくようになっていたから、、、上手くいくだけでなく周りの同業が困って大変な時でも松井家の旅館は大丈夫だったから、、、、それは鏡が人を喰った力で松井家を守っていたからでした
鏡の中には、松井さんのお祖母さんも奥さんも従業員の男も居たそうです。鏡が人を喰ったことを松井さんの目が証明してしまいました
もっと早く割って壊していれば奥さんは奥さんは喰われることが無かったのにと涙を流しくいていました
そこに志穂さんが戻って来ました。高槻先生たちが納戸に入っていることにビックリしていましたが、それ以上に「紫鏡」が割れていることと、その目の前で泣いている父にビックリしていました
志穂さんはお父さんの背中をさすり、松井さんは旅館の後継の話をして、志穂さんと改めて話をしようってことになりました
鏡は割れて、松井家は呪いから解放されました。割れた鏡は、初めて見た時は汚れもなく綺麗でしたが、今は台座は黒ずんでいて鏡面にも染みが浮き出てました
高槻先生は志穂さんに「紫鏡じぁないよ」と伝え、旅館を出ました
旅館を出てから尚哉は高槻先生に、鏡を割った時のことを覚えているかを聞きます
高槻先生は覚えていませんでした。鏡から手が出て来たところは覚えているが、気づいたら鏡は割れている状態だったみたいです
尚哉は高槻先生の後を追いながら、志穂さんのお母さんの失踪の真実を整理してると前から呟きが聞こえました
呟いていたのは高槻先生でしたが高槻先生ではなく《もう1人の高槻》でした
夜空色の瞳をした《もう1人》は尚哉の匂いを嗅がれます。そして尚哉から黄泉の匂いがすることを指摘し、さっきの鏡の空気が祭りの夜と同じ黄泉の空気だったことを教えてくれます
そして《もう1人》は長野でのことで尚哉にお礼を言い、意識を高槻に返します
尚哉が高槻先生に声を掛けると、「今まで普通に歩いてたけど急にどうしたの?」みたいな風に返事をしました。でも尚哉の表情で《もう1人》入れ替わっていたことに気づきます
尚哉はついさっきのお礼と匂いを嗅がれたことを伝え、安心させます。「外部記憶装置」として役割を果たしたでしょ、と。
2人は浅草の仲見世通りで佐々倉さんへのお土産を買って帰りました
尚哉は高槻を追いながら、《もう1人》は高槻先生にとって守護者的なものでないかと感じました。でもこの先も気を許しすぎず、高槻先生の傍にいて今後を見届けようと決意します
おわりに
高槻先生の講義
- お化け屋敷でお化け
ディズニーランドのホーンデットマンション「無限回廊の幽霊」 - お化け屋敷のルーツ
- 『ハレ』と『ケ』
- ジェットババア、ターボババア、タタタババア、超音速じいさん
- 人面瘡
- 紫鏡
「鏡」にまつわる話。
最後の章の「鏡」はゾッとしましたが「本物」に出会ったはずなのに、《もう1人》が出てきてしまったばかりに喜びは何処かへいってしまったもよう、、、、
表紙の不安な表情の「高槻」と少し清々しい表情の「尚哉」の理由は
- 不安な表情の「高槻」:無くした幼い頃の記憶、何があったのかを知ろうと、怪異を求めればいつか「神隠し」の間のことが分かる時がくると行動して、たどり着くと《もう1人》によって記憶を消されてしまう、、、、意味があるのかと不安に思っている
- 清々しい表情の「尚哉」:祖父の言葉に突っかかりを覚えますが、分からなかった長野の祭りの謎が分かり、知る意味はあったと解放された気持ちの表情
だと思います、、、(私の解釈)
《もう1人》のことも少し分かってきましたが、、、、いつか《もう1人》と対峙して解決する日が来るのか、、、見ものです!!!